覚書・記憶・そして・・・

 

 「衛生の旅」をPart 1からPart 7まで私書版として出版したあと、「覚書」を書き始め、電子出版として刊行した。

 「覚書」を書いたときには、記録に間違いないように、孫引きはせず、自分の経験を中心に、身近にとっておいた過去の文献にあたって書いた。その「覚書」も一通り書き終わったあと、身辺整理をはじめた。

 自分の書いた文献のみ残して記録し、戴いた書物は古書市場へ、また参考文献・切り抜きなどは処分した。従ってそれ以後書いたものは原著に当たる時間が無く、私の「記憶」に残るものを書いた文章であることを了解して戴きたい。

 「そして・・・」と書いたのは、今後どうなるかな・・・という気持からである。

 

 最近の話題「200億円!」をテ−マに、これについての連想の思い出・記憶・今の意見を書いておこうと思う。

 

 「%」(パ−セント)から始める。

 「パ−セント」は「1/100」で百に対してという意味である。いつか話題になった「分母と分子の関係」である。この関係の理解は「疫学」では大事である。

 衛生学の中で、空気中の炭酸ガスの恕限度は「0.1%」というのがあった。その「0.1%」は「1プロミレ」ともいわれた。「mille」は千で「1/1000」である。

人口動態統計では人口千についてとか出生千についてといわれることが多い。

 そうち「ppm」がでてきた。「parts per million」である。百万にたいしてという意味である。一酸化炭素ガスの恕限度は「0.01%」「100 ppm」といわれた時があった。

 これを講義で喋るとき「百万長者と結婚する法」(How to marry・・millionnaire」とかモンロ−の映画を話題に説明したことを思い出す。「百万円」がそれなりの長者としてのイメ−ジがあった時代であった。「百万ドルの夜景」というのもあった。

 そのうち「ビリオン」(billion:10億:1兆:二つの(乗)百万」に対してと「ppb」と、公害問題・環境の指標などでいわれるようになった。

 国会審議などでも「兆」がいわれ、汚職や犯罪の金額またプロの人達の契約金が「何億」と云われる時代になってきた。

 そこへ「200億円!」の判決が報道されたのである。

 当のご本人の発言を聞いていたら「いい加減な額!」とかいっていた。青色発光ダイオ−ドの特許料に関する知的財産価値に関する裁判の判決で、その価値は「600億余」と計算されるが、申請が「200億円だから」と報道されていた。

 この判決への世間の反応は、事業家側は反対であるが、どちらかと云うと「好意的」である。判決の仮執行もできるのにご本人は申請していないようである。

 私の感想は後でのべるが一寸別である。

 そうこうしているうちに「味の素甘味料発明:元社員に1億8935円:東京地裁判決貢献度2.5%認定」と報道された。

 つづいて「フラッシュメモリ−発明:対価10億円求め提訴」東芝、元社員」と報道されている。

 「知的財産の価値」はどれほどのものなのだろうか。

 ビル・ゲイツが世界一の長者になった。それが格好よくみえるのであろうか。それを目標に研究を行うのであろうか。

 

 「特許」は「royality:ロ−ヤリテイ」とも云われる。語源的には「王の特権」である。歴史的なことを勉強したわけではないが、近代的な経済的な仕組みの一つであろう。だから特許をとれとれといわれ、それによって国また大学までも、といわれている。

 研究者のはしくれとして生活してきた者として考えることを書いておく。

 研究者が研究をするのは、その特許またその見返りとしての「お金」が目当てなのであろうか。そういう人もいようが、研究を進めることが「面白くて、面白くて、楽しくて」しょうがないのではないか。そんな場所なり研究費が与えられていれば、それができる人は恵まれた人ではなか。TVの「プロジェクトX」は成功した過去のそんな技術者をさがしている。

  私も日常服用している商品名「アリナミン」のもとになった「アリチアミン」を発見された藤原元典先生はどうされたのであろうか。

 ノ−ベル賞をもらわれた田中さんはどうなのであろうか。世間から”さわやか”に見られているのはどういうわけなのであろうか。

 この4月から国立大学も、いままでの「国家公務員」「教育公務員」ではなくなる。弘前大学から「国立大学法人弘前大学設置記念式典」を4月2日に行いますと案内状が届いた。

 昭和29年に弘前大学へ赴任したとき「あっと驚いた話」は昔話になってしまった。

 ところで「国益」」「公益」と関係ある話になるが、その研究の成果が「軍事」に利用できると考える人がいたらどうなるであろうか。 

 「軍事秘密」は「特許」の出願はされないであろう。

 イギリスで天才的な頭脳をもっていた人が通信の暗号を解読し、世界大戦に勝利した話を聞いたことが記憶にある。

 旧満州での「石井部隊の成果」が戦犯との取引に使われたかの報道がある。

 アインシュタインがドイツナチスに負けないために「原爆」を作るようアメリカ大統領へ手紙を書いたといわれる。だが現実に日本への「原爆投下」になったとき、そのことを反省し「平和運動」を始めたとも云われている。その原爆作成に携わった科学者はどんな気持で仕事をしたのであろうか。 

 「科学者」が(相手に勝つという)戦争目的のために、自分の意思によって研究をしたのであろうか。あるいは「拉致」されて、・・・自分および家族が生きるために・・・と行動したのではないかと考えるのである。(20040310)

(弘前市医師会報,39巻6号通巻298,67−68,平成16.12.15)

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