第1景
 時は19世紀中頃、スイスのセルトヴィラという小村。マンズとマーティの畑のあいだにある丘の上の荒地、2人はともに働き者の農夫だが、例の荒地を少しでも早く、自分の手で耕して我が物にしようと競い合っている。2人の子供のサーリとヴレンチェンが、それぞれ父親の弁当を持ってやって来る。2人の農夫は畑から戻って、この荒地で弁当を広げる。そこへ陰鬱な色の黒い放浪のヴァイオリン弾きが通りかかり、この荒地は実は自分の土地なのだが、自分は私生児で流れ者なので、この俺には法的な権利はないと呟く。そしてマンズとマーティを指差して、あの2人の泥棒は、俺の土地を狙っているようだが、そんなことをたくらむと因果応報で、ろくな結果にはならないぞといい残して、立ち去って行くのだった。マンズとマーティは、あんな風来坊に土地の所有権なんて、認められるはずがない、競売にかけられたら、俺たちが競り落とすことになるだろうと、お互いもう既に境界線を越えていると主張し、激しい口論になり、それぞれの子供たちに、もう付き合ってはならないぞといい含め、別々の方角に分かれて行く。
第2景
 第1景の6年後、荒れ果てたマーティの家、この6年間は裁判に明け暮れ、マンズもマーティもともに、すっかり財産を使い果たしてしまっていた。サーリは幼馴染のヴレンチェンに、どうしても会いたくなったと訪ねて来る。もう一度仲良しになろうよ、という彼の言葉に彼女は、父が戻って来るとまずいから、夕方に森で会いましょうと答える。
第3景
 森の荒地で寝転んで待っているサーリのところへ、ヴレンチェンがやって来て、子供のときと同じように、いたずらっぽく隠れんぼをしたり、2人は楽しそうに戯れる。そこへ陰鬱なヴァイオリン弾きがあらわれ、俺の土地を奪おうとした君たちのお父さんは没落した。自分と一緒に放浪の旅をしないかと、誘いをかけてまたどこかへ消えてしまう。あの人が来たときから、お父さんたちは争い始めたのよと、ヴレンチェンはいって怖いわと呟く。サーリは彼女を励まして、昔のように2人は鬼ごっこを始めるが、麦畑にもつれて倒れたとき、抱き合って初めて唇を合わせる。ちょうどそのとき娘を探しに来たマーティが、抱き合っている2人を見つけて、ふしだらなことは止めよと憤激する。2人を引き裂いて娘を連れ戻そうと、手を引いて歩き出す。するとサーリが彼女は自分のものだと叫んで、マーティをその場に突き飛ばす、倒れて動かなくなったマーティのもとに、ヴレンチェンは駆け寄って、サーリに何ということをしてくれたのだと叫ぶ。
第4場へ
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