第4景
 荒れ果てて、何もなくなったマーティの家。父親を生まれ故郷のセルトヴィラの老人ホームに入居させ、1人家に帰って来たヴレンチェンは、とうとう天涯孤独になってしまったと呟く。サーリがあらわれ、君なしには生きて行けない、これからは2人で暮らそうというが、彼女は一緒には居たいけれど、自分の家は売ってしまったし、一体どこに住んだらいいのといって、今夜だけは一緒に過ごして、明日になったらお別れしましょうと、彼にそっと寄り添う。間もなく2人は眠りに落ち、場面は幻想的な2人の夢の場になる。
 サーリとヴレンチェンは、セルトヴィラの古い教会で、結婚式を挙げている夢をみる。夜が明けてヴレンチェンが夢の話をすると、サーリもまったく同じ夢をみていたと不思議がって、きっとこれは正夢になるという。ヴレンチェンは何とその日が、待ち遠しいのでしょう、せめて1日だけでも2人で、楽しく過ごしたいというので、サーリは彼女を定期市に誘い出す。
第5景
 ベルクハルドの定期市。数多くの露天商のほかに、回転木馬やサーカスも出ている。定期市は晴れ着姿の村人たちで、大いににぎわっている。サーリはヴレンチェンに、リボンを買ってやり、ダンスをしようと誘うが、ともにみすぼらしい恰好をしているので、みんなからじろじろみられ、いたたまれなくなってその場を逃げ出して、「楽園」へ行こうといって2人は駆け出す。
 ここでかなり長大な間奏曲、「楽園への道」が演奏される。
第6景
 楽園とかつて呼ばれていた、美しい庭園。今は荒れ果てているが、かつての美しさの名残をとどめているこの楽園に、ホームレスたちが集まってテーブルを囲んでいる。例の陰鬱なヴァイオリン弾きが、1人前へ出て昔話を始める。それはベルクハルトの年老いたラッパ吹きが、私生児の息子にある美しい土地を残して死んだが、その子は相続権を主張しなかったので、土地は荒れすさみ、それを2人の農夫が奪おうとしてともに身を滅ぼし、その2人の息子と娘は、愛し合うようになったという物語だった。
 そこへ当のサーリとヴレンチェンがあらわれ、ヴァイオリン弾きとホームレスたちは、仲間に入らないかと2人を誘うが、サーリとヴレンチェンは体質的に合わないと断る。ホームレスたちとヴァイオリン弾きは、連れ立って居酒屋のある方へ去って行く。ヴレンチェンがサーリにキスして、静かに抱き合っていると、やがて月が昇り遠くから船歌が聞こえて来る。ヴレンチェンはもうどこへも行くところがないわ、でもあなたなしでは生きて行けない、一緒に死にましょうとサーリに囁く。サーリも心中を決意して、2人は干草を積んだ小船に乗り、船底の栓を抜いて河に漕ぎ出して行く。するとヴァイオリン弾きが、居酒屋のバルコニーに出て、沈み行く小船を仲間たちに、意味あり気に指し示すところで幕になる。
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