第2幕ブエノスアイレス、エルドラドそしてヴェニス
キャンディードはクネゴンデと老婆を伴いブエノスアイレスにやって来る。丁度同じころ、不思議なことに男爵家の息子で惨殺されたマクシミリアンと小間使いのパケットも蘇り、奴隷女に変装してブエノスアイレスに来ていた。土地の支配者でドン・フェルナンド・デルバラー・イ・グエロア・イ・マスカレネス・イ・ランポウドス・イ・スーザと言う、呆れた長い名前とそれより長いあごひげを蓄えた男は、なんと女装のマクシミリアンに恋をするが、男と気が付きクネゴンデに結婚を申し込む。キャンディードは警察から逃れるために、土地の支配者を手なずけたクネゴンデと老婆を残し、忠実なるお供カカンボを連れジャングルに逃げ込む。そこで猿を愛し人食い人種である女性に出会い、イエズス会の野営地へと案内される。イエズス会司祭長夫妻は、あろうことかマクシミリアンとパケットであった。感激したキャンディードは、奇跡的にもクネゴンデが生きていること、そして彼女との結婚を決心していることを告げる。それをきいたマクシミリアンはまたもや身分不相応だと激怒するので、逆上したキャンディードは、マクシミリアンを殺傷してしまいう。それから3年の月日が流れ、クネゴンデと老婆はブエノスアイレスの支配者に囲われ、ジャングルに潜伏するキャンディードとカカンボは何もかも失い、飢えに苦しんでいた。ある日彼らは岸辺に捨てられたボートを見つけ川を下り、大きな洞窟の暗闇の中をまる24時間激流にもまれ、そびえたつ山々に囲まれた黄金郷エルドラドに流れ着く。町の広場は宝石や金で埋め尽くされバラの香水が湧き、クローヴとシナモンの香りが漂っていた。そして裁判所もなく科学的なものも一切のなく、ヨーロッパとは違う神を信じていた。キャンディードはついにパングロスの言う理想郷を見つけたと思ったが、クネゴンデなしでは幸せにはなれなかった。そこで心優しきエルドラドの人々からもらった宝石を積んだ金の羊達を連れてクネゴンデ救出に向かう事を決意する。想像以上に山は険しく金の羊達は眩暈のするような絶壁に落ち2頭だけが生き残った。やっとのことで山を越えたキャンディードは死刑宣告がでているブエノスアイレス行きをやめ、カカンボにクネゴンデの身請けを頼み、ヴェニスで落ち合おうと約束する。そしてスリナムにあるオランダの植民地に向かいヴェニス行きの船を待っていたキャンディードは悲観主義者のマーティンに出会う。マーティンは悲観論の証拠としてサトウキビの大農園で手も足も切り落とされた奴隷を見せ「もし鷹が鳩を捕食するように生まれついているなら、人は人を食べないとどうして言えるのだ」と悲観主義の確信を語るのだった。キャンディードが楽天主義で反論しようとしていると、オランダ人のヴァンデルデンダーという悪党が金の羊目当てに近づいて来て「ヴェニス行きのボート、サンタ・ロザリア号と金の羊を交換しよう」ともちかける。キャンディードは喜んで申し出に応じ、「全ては最善になる」というパングロスは正しかったとマーティンに告げる。しかし船は沈みマーティンは溺死し、ヴァンデルデンダーは金の羊と深い海の中で再会することになる。それでもキャンディードは航海中の豪華船に救助され退陣した五人の王達に会う。豪華船の底では哀れな奴隷達が喘ぎながら櫓を漕いでいた。そこにまた、重なる奇跡で生き帰ったパングロスが現れ、ギャンブルに明け暮れる王達に「もし王様達が陸にいたら、神や人々に尽くし、慎ましく生きなければならないのです。」と楽天主義を説いていた。船は進みキャンディードとパングロスがヴェニスに着くと、マクシミリアンもまたまた生き帰り賄賂で私腹を肥やす警視総監になり、パケットが売春婦達を牛耳り、クネゴンデと老婆は博打打の慰みものとして雇われていた。パングロスは老婆の仕組んだ八百長で大儲けをし、女達を侍らせて豪遊に繰り出そうと大いに盛り上がる。しかしキャンディードは浮かれる事もなく、何日もの間黙り込んだまま、口をきこうとしなかった。彼らはヴェニスからちょっとはなれた場所に小さな農場を買うに十分なお金を手にしたが、クネゴンデと老婆は汚れた我が身を嘆き良心の呵責に苛まれていった。ついにキャンディードは口を開き「人生は信頼、喜び。私が夢み、涙した愛。私が殺し、命かけた全て。それ以上に何があるだろう」と歌う。人々が「人生は良いものでも、悪いものでもなく、ただ人生は人生なのだ」と合唱する中、キャンディードはクネゴンデに結婚を申し込み、全員で「私達は純粋でも賢明で善良でもない。私達は最善を尽くすだけだ。家をつくり、森を切り開き、そして私たちの庭を作るのだ」と歌い幕となる。

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