歌劇「3人のピント」のお客様から、公演の感想が届きました!
ウェーバーにあのようなブッファの作品があるのを知らなかったので、それを再現してくれたことに感謝です。ドイツ語のアリア歌唱とセリフもスムーズで、初めてのオペラの理解を大いに助けてくれました。字幕も、速さと量、ちょうどいい具合でした。すみずみまで行き届いていた舞台作りです。
 第2幕への前奏曲は追川氏の面目躍如。ここでしっかりマーラーが主張されましたね。ソロ級の歌手を置いている割には、その他の方々とのギャップはなく、全体がアンサンブルとして破綻なく進行して良かったと思います。聞いていて時々「魔弾の射手」の合唱を想いださせて面白かった。必要最小限の道具を駆使しての舞台でしたが、同オペラが手の内に入った佐々木修氏の、きびきびと推進した指揮がなければまとまらなかっただろうと感心いたしました。
「おもしろくなければテレビじゃない」はバブル経済絶頂期のテレビ時代にうまれ、当時はさんざん持て囃された言葉だが、その出所がスキャンダルを生んでしまったために、今ではいささか憚られる物言いになってしまった。しかし、オペラに関しては、今でも金言として生きているように思う。おもしろくなればオペラじゃない!
日本橋劇場で上演された「三人のピント」は実に楽しめるオペラに仕上がっていた。「魔弾の射手」で有名なウェーバーの未完のオペラで、マーラーが補筆完成させたもの。ドイツオペラ伝統のジングシュピールになっている(ドイツ語の歌とセリフによる劇)。歌はドイツ語で、セリフの部分は日本語で上演された。そのため、初めて聴くオペラでも、たいへんわかりやすかったのが成功の一因と言える。ついでながら、演出も、時代背景を考慮したまっとうなものだけに実に音楽に入りやすかった。時代が中世なのに、登場人物が、今では時代遅れのバレンチノ風のスーツを着たり、20世紀初頭かと思われる煙の出る工場地帯が舞台背景だったりする通しか喜ばない酔狂なものだったら、99パーセントの聴衆は鼻白んだことだろう。
主役をはじめソロ歌手たちはなかなかの芸達者だった。中でもラウラ役のソプラノは、ちょっとおキャンで世話好きな女中役を、みごとにこなしていたと思う。うまいというより、役になり切っているところが好感がもてた。ドン・ゴメス役は実にきれいなぴか一のベルカントで、歌は文句がないのだが、いかんせん若者らしい一途さが感じられない。人生の酸いも甘いも知った老成ぶりがいささか気になった。その点、ドン・ガストン役は青年のセンチメントを持っていてよかったと思う。第一幕で歌うウェーバーらしいアリアは聴衆を惹きつけた。最後はオペラ・ブッファではおなじみの、全員のコーラスで大団円となった。
いずれにせよ、せっかくここまで準備し、練習を繰り返したのに、たった一回で終わらせるのはなんとももったいない気がする。おもしろくなければと言ったが、オペラの上演はたいへんな才能と努力とお金がいる。まず、他のジャンルの音楽に比べても演奏がすこぶる難しいし、ソリストたちも声に恵まれた上に、広い音域や技巧を要求され、一朝一夕でできるものではない。それがせっかく成功にまでたどり着けたというのに、たった一回の公演で終わるのは大器小用だ。もっとプロフェッショナルなプロモーターと相談してもいいのではないだろうか?
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