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日本橋オペラ2025歌劇「3人のピント」[全3幕]日本初演
Die Drei Pintos
C.M.v. Weber (1820~21), Gustav Mahler (1887~88)
ウェーバー×マーラーの共作
❖登場人物❖
ドン・パンタレオーネ・ロイス・デ・パチェコ(B) ドン・ゴメス・デ・フレイロス(T) クラリッサ(S) ラウラ(Ms) ドン・ガストン・ヴィラトス(T) アンブロジオ(Br) ドン・ピント・デ・フォンセカ(B) イネス(S) 居酒屋の主人(B)
あらすじ
第一幕
 舞台はスペインのサラマンカとマドリードの中間にある、ペニャランダ村の居酒屋。学生たちが、ドン・ガストンの送別会を開いている。学生たちは青春を謳歌し、明るい未来を夢見て杯を重ねる。ガストンはマドリードで優しい心の娘を見つけようと「ポラッカ」を歌う。しかし居酒屋の勘定書を見てびっくり!調子よくおごった結果、ガストンは無一文になる。そこに居酒屋の美人の娘イネスが姿を現し「ネコのロマンツェ」が歌われる。ガストンは早速イネスを口説きにかかるが、軽くあしらわれる。そこへ、このオペラのタイトルロールである、野暮ったい田舎貴族ドン・ピントが登場する。実は、彼の父とクラリッサの父親ドン・パンタレオーネは旧友であり、ふたりの結婚はすでに親同士のあいだで取り決められていた。そしてピントはこの日、その結婚のためマドリードに向う途中だった。ガストンは田舎者のピントに、都会的な恋愛術=騎士道的な求愛の作法だと偽って、従者のアンブロジオを花嫁役に仕立て、わざと滑稽な求愛の作法を教える。上機嫌のピントはお礼に皆に食事をおごるが、満腹で酔っ払ったピントは寝込んでしまう。その隙にガストンは、ピントの父がパンタレオーネに宛てた紹介状を上着から抜き取る。この手紙を持って一足早くマドリードに到着して、ピントになりすまそうという計画だった。

第二幕
 マドリードのドン・パンタレオーネの屋敷。召使や使用人とともに、娘のクラリッサや女中のラウラも集まっている。主人のパンタレオーネは、今日にも到着するピントがクラリッサの婿になると伝えるが、ドン・ゴメスという恋人がいるクラリッサは父親の話に絶望する。そんなことは気にかけないパンタレオーネは祝宴の準備を命じる。クラリッサはラウラに、恋人のゴメスがご法度の決闘を行ったことで、彼を父親に紹介できないことを嘆き。また、昔クラリッサの父親がピントの父親フォンセカの世話になり、謝金のカタに結婚を約束した事情が語られる。ラウラは「最も純粋な幸福は、誠実な愛」と励ます。クラリッサは「どんな運命であっても愛する人を手放さない」と長大なアリアを歌う。ここで、ラウラに連れられてドン・ゴメスが現れる。恋人同心の二人は愛を再確認し「愛・希望・信頼をもって、美しい日々を見つめよう」と美しい二重唱を歌う。そこに「お父様が来るわ、早く!」と叫びながら、ラウラがあわてて駆け込んで三重唱となる。

第三幕
 ドン・パンタレオーネの屋敷の大広間。ラウラは召使たちと結婚式の飾り付けに忙しい。そこにピントになりすましたガストンが、アンブロジオを従えてやって来る。ここで、ラウラを口説くアンブロジオ、男の甘い言葉には気をつけてとガストン、軽くいなすラウラの3人による「カノン」が歌われる。続いてアンブロジオが「ふられた時の保険に、複数の恋人がいた方がいい」と独自の女性観を歌う。そこにゴメスが現れる。ゴメスはガストンをピントだと思い込み、両者険悪な雰囲気になるが、ゴメスがクラリッサへの純愛を美しいメロディーで告白すると、ガストンはあっさり「それだったらゴメスとクラリッサが結婚したらいい」と譲る。そして本当は、自分はピントになりすましたガストンだと告白し、ピントの父親からの手紙をゴメスに渡し、今度はゴメスがピントになりすまして、クラリッサとどさくさ紛れに結婚したらいいと計画を進める。
 パンタレオーネ家の召使たちが現れ、ガストンとゴメスを見比べながら、どちらがクラリッサの婿なのかと戸惑う。続いて、パンタレオーネが着飾ったクラリッサを連れて広間に入場する。ゴメスは、例のピントの父親からの手紙をパンタレオーネに見せるので、彼はすっかりゴメスをピントと思い込む。結婚の祝宴が始まったところに、はたして本物のピントが現れ、大騒動となる。
 ピントはクラリッサに対して、居酒屋でガストンから教わった滑稽な求愛の作法をぎこちなく披露し、一同は大嘲笑、誰も場違いなピントを本物の婿だとは信じない。するとピントはガストンを見つけて、ガストンがこの悪芝居の張本人だと怒るが、逆にガストンから決闘を迫られ、皆から袋叩きにあい、逃げ出す。
 騒動がひと段落したところで、ガストンはパンタレオーネに、逃げた彼が本物のピントだと明かし、ガストンとゴメスは自分の名を名乗る。パンタレオーネは呆れ果てて怒るが、ガストンの機転と説得、そしてなによりクラリッサの幸せそうな様子に心を動かされ、ついにゴメスとの結婚を認める。こうして物語は愉快な大団円を迎える。

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