この公演は新型コロナウイルス感染予防のため、舞台上ではソーシャルディスタンス(前方2m)が求められた。

前奏曲〜金春流能楽師山井綱雄氏の荘厳な能舞。

プロローグ。東シナ海。フランス海軍トリオンファント号の艦上。士官のピエールと船員のイヴが日本を夢見る。

長崎の島影が見えてきた。いよいよ日本だ!

トリオンファント号の長崎港入港。民衆は港に外国船を出迎える。

芸者の登場。日本橋劇場の松羽目の舞台が使用された。

ピエールは一人の芸者を気に入る。

結婚仲介人の勘五郎は、自らを早口で「洗濯屋、通訳、詩人、秘密厳守、ミカドのお墨付き」とPRする。

勘五郎はピエールと芸者との結婚をまとめ「お菊さん」の名前が明かされる。

第2幕。流麗な能舞

お菊さんの義母お梅は、天照大神に日課のお祈りをする。

お梅は背の高いイヴがお気に入りで、貞操感を守るのに必死だ。

お菊さんの義父のサトウさん(シュクル=砂糖)は画家。ピエールとイヴの前で一筆描く。

ピエールはブルターニュで見た夢の国「日本」を思い出し、アリア「竹と紙でできた家」を歌う。

ピエールは愛を誓うが、お菊さんは「言葉は裏切るから、愛するならば誓わないで」と答える。

結婚初夜の翌朝。フランスの習慣に従い、友人達がお祝いに来る。お雪がブルターニュの歌を歌う。

第3幕。長崎諏訪神社の夏祭り。

人々がランタンを手に参集する。

フランス人船員が僧侶に扮して入場する。南無阿弥陀仏の大合唱

モッテコイ!モッテコイ!長崎くんち

祭りには、丹波の横綱やインドの猛獣使いも登場する。

民衆はピエールにメダル、ロザリオ、経典、マスク、花などを売り付ける

ピエールはイヴとお菊さんとの仲を疑うが、お菊さんは扇子に例えて、ただの友人だと答える。

お雪は小鳩を手に、ピエールにアリエッタを歌う。

たばこの合唱。キセルを手に、タバコは健康の源、我が人生と歌う。

フランスオペラに欠かせないバレエの場面。猩々(しょうじょう)が舞った

猩々とは古典書物に記された架空の動物。真っ赤な能装束で飾った猩々が、酒に浮かれながら舞う。

このオペラで唯一歌い継がれてきたアリア「セミたちの歌」フランスでセミはプロバンスだけに生息する太陽の象徴。

ピエールは怒り、イヴとお菊さんは誤解だと許しを請う三重唱。ワーグナーを彷彿とさせる。

3幕フィナーレ。再びランタンを手にした民衆の合唱。

4幕前奏曲。神聖な能舞

お菊さんとお雪の二重唱。プッチーニはこの曲にヒントを得て、蝶々夫人の花の二重唱を作曲した。

ピエールはお菊さんとの愛の生活を振返り、アリア「夏は魂の目覚め」を歌う。

お菊さんとピエールの愛の二重唱。頂点に達したその時、帰艦を命ずる大砲が鳴り響く。

イヴはブルターニュの家族の元に帰れる喜びを歌う。

お菊さんの家族もお別れにやってくる。

勘五郎も清算にやってくる。高額で驚くイヴ。

お菊さんとピエールとの別れ。

二人は抱き合いたいが、見えない壁があり近づけない。二人が地球の反対側に生きることを表現している。

間奏曲。エピローグ。再びトリオンファント号の艦上。

長崎の灯りが遠ざかる。まだお菊さんとの仲を疑っているピエールに、お菊さんからの手紙を渡す。

ピエールはお菊さんからの手紙を読むが、無感情に手紙を海に捨てる。

能舞がお菊さんの魂を表す。

歌劇「お菊さん」の日本初演、世界でも93年振りの蘇演が無事に完了した。
お菊さん-indexに戻る