「民族衛生」のこと

 

佐々木直亮:名前のことが今日のテ−マのようですが、結論から申しますと、「民族衛生」という名前はそのままで私はいいのではないかと思います。あまり名前にはこだわりたくない、と個人的にはそういう考えをもっています。何年か前に英題を Health and Human Ecology と変えた時期がありました。それも随分論議をしたと思いますが、日本語の方は変えないで英題を変えることになりました。ただ内容としては Human Ecology ということがかなり強調された、ということであったと思います。私も学会長をやらせて頂いた時に、そういう意味で学会長の言葉を述べました。なぜ言葉にこだわらないかというと、私は主として疫学 Epidemiology をやってきましたが、「疫学」にも疫学者の数ほど定義があるということで、名前ではなく、一体どのような研究をしているのか、そこが問題であると考えます。民族衛生学会に属している方が一体そういう名の下で、自由な発想で、どのような研究をしているか、それを発表し、討論をし、積み重ねてゆく、それが大切なことではないかと思います。民族衛生学会は歴史的にいうと医学会の中の分科会としては古いものです。集まった人々がそれぞれ独自の研究を発表し、刺激しあいながら、運営をうまくやっていただいて、またその記録をのこしていけば、この学会は続くのではないかと、私はそう思います。

            (民族衛生,59(5), 249, 1993.)

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