3分間スピーチ

 

 卒業30周年おめでとうございます。

 懐かしい顔、顔ばかりでちょっと涙がでそうになりました。

 私が高橋英次先生のあと衛生学の教授になったのは昭和31年でまだ公衆衛生学教室のできない前で、1年から4年まで、海軍の言葉に月月火水木金金という言葉がありましたが、よくやったと今思います。皆さんもこの30年いそがしくやってこられたものと思います。

 教授になったとき、教育・研究・社会への奉仕の3つの柱を考えましたが、その順番は研究・教育・社会への奉仕であって、自分の思うままに研究ばかりやって、教育は後回しになったことを今反省していますが、よく皆さんは国家試験に通って、医師になって戴いたことを感謝しています。それでも当時としては先をゆく考え方を勝手にしゃべっていたと思いますが、それから30年現在になっても通じることをしゃべっていたと思い、今皆さんに分かっていただけるのではないかと思っています。

 医学部を卒業して現在は東北女子大学の教授として健康科学を文部省にうりこんで、お嬢さんがたと勉強しています。私が弘前へきたての頃に聖愛とか柴田の短大で教えた方の、今日もこの会場に顔がみえますが、その方のお嬢さんが今の学生です。

 今はさっきの三つの柱の順番は変わって、一に社会奉仕、二に教育、三に研究です。

 ほそぼそ研究をつづけていますが、先日ワシントンでの第2回国際予防心臓病学会で発表してきました。塩が悪いのでないかとは皆さんが学生時代からいっていたことでした。りんごがよさそうだともいっていましたが、今度はそれを長期に追跡した成績を発表してきたのであって、りんごが私のつくった言葉での「ベネフィット・ファクター」になるのではないかということです。このベネフィット・ファクターという言葉はまだ一般にはいわれていませんがあと30年もすれば一般にいわれるようになるでしょう。そんなように時間がかかるものだと思いますが、皆さんがこれまでやってきたこともあと30年ごに評価されるのでないでしょうか。

 以前クイズゼミナ−ルでりんごと健康についてレクチャ−をしたときは2分30秒きっかりにやれということでしたが、今日は3分間でお願いしますということですので、まだ生きていて元気でいますと顔をみせればよかったのですが、近況をおはなしした次第です。

 明日のゴルフのご案内をうけ、出席したいのですが、ちょっと身内の結婚式がありますので失礼させていただきます。

 私の計算によると、あす死を迎えるかもしれませんし、まだ30年生きるかもしれませんが、今後お互いに元気にやっていきたいものだと思っています。

 今日のご招待にお礼をかねてこれで3分間スピ−チを終ります。

   (弘前大学医学部5回生卒業30周年記念式典 平成元年9月23日)   

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