夏の汗

 

 朝はやく東京の相沢豊三先生に所用があってお電話したら、いま外出中ですとのことであった。ゴルフの早朝練習にお出掛けであった。

 これだな、先生が私より十年以上歳上なのにお元気な秘訣は。私もその真似が出来るようになりたいな、と思っているうちに停年になり、また近くにゴルフの練習場ができ、早朝サ−ビスを始めた。

 朝8時までは千円で打ちぱなしである。昨年まではウィ−クデイは昼まで千円なので、われわれにはたすかる安い練習ができた。アプロ−チの練習にはもってこいといったところだが、若い人と違ってそうそう打てるわけではない。それでも汗がでるまで練習することができた。

 

 冬になると雪がふり、家の近くの練習場はクロ−ズドになる。

 そこで体をもてあまし、雪道のウォ−キングをはじめ、一日一考をするようになったのである。朝のすがすがしい空気の中を歩くのはこれまた気持ちのよいものであるが、夏になるとすこしあつすぎる。

 

 家内が友人たちと近くの温泉場をわたりあるいての経験から、近くの白馬龍神温泉がよいという。安くて綺麗で広々して、そしてあなたの皮膚病にもきっときくから。

 老人性皮膚掻痒症というのであろうか、皮膚科にかよって数年になる。

 二十年前に家を建てたとき、いつでも風呂に入れるように風呂場を設計し、所番地が家を建てた時には旧千年村字山崎であったので自ら山崎温泉といって、朝晩お風呂に入っていたのだが、本物の温泉にゆくことにした。

 車でほんの十分ぐらいのところにできた小栗山の温泉であるが、 250円で、これも早朝8時までにゆくと 200円ですむ。

 人工の 小鳥の声ききながら 朝湯かな

 天然のかっこうの鳴き声が聞える郊外ではあるが、近ごろのホテルなみにテ−プで鳥の鳴き声をながしている。

 広い温泉場にゆっくりと入ることができる。色々の名前のついた風呂があり、サウナや水風呂もある。

 サウナにはいると、汗について、また汗の中のミネラルについて考えを巡らす時でもあると、前に東京温泉という文に書いた。

 NHK の トライ&トライで汗のことをやっていた。加藤映一君が登場していた。昔慶応の衛生で汗の研究をやっていた先輩の仕事をそばでみていたことが思い出された。たしかねずみは汗をかかず、熱いところにいれると、濡れ鼠のようになるのは、汗腺のないねずみは唾液をだし、それを体にぬりつけて体温調節をやっているのです、と原島進先生に聞いた覚えがあるのだが。TVの画面では鼠が汗をかくように受け取られる場面があった。今度加藤君に会ったら聞いてみよう。

 汗の中のミネラルについての解説も、時がたつと内容が変わるようだ。今度の番組の中では、汗腺の汗のミネラルも管の途中で腎臓と同じように再吸収されているとイラストされていた。汗がでるからすぐ塩が必要だとは解説していなかった。それより水と汗と体温調節が中心であった。

 新聞の夏ばて予防の記事の内容も水と体温の調節を中心に書かかれるように変わってきた。

 テニスの練習をした学生がかいた汗の水分を実感させるため、一升瓶を抱かせた演出は具体的でよいと思った。

 体重計もディジタルになって、より明確に体重の変化がわかる。

この温泉場の体重計も100g単位ではあるが、自分の体重の日々の変化、そして入浴前後の変化が具体的に認識される。

 サンクトリウスが1614年にさおばかりの体重計に座って、不感蒸泄を定量的に認識し、生理学が始まったことを思いだした。 

 ここのサウナは湿サウナであるが、そのうち自分の実験室にしてみたいものだと考えているうちに汗がでてきた。

 砂時計はないが、一曲くちずさむことで時間がわかる。 (1・7・20)

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