短命県をなくそう”キャンペ−ン

 

 せっかくの機会ですので、今日は「ベネフィットファクタ−」についてお話したいと思います。

 「ベネフィットファクタ−」という言葉は私がつくった言葉ですが、ちょっと前に医学雑誌に書きましたが、一般の方にお話するのは今日が初めてであります。

 どのような意味の言葉であるかは今日の話を聞いて戴くとお分かり頂けると思いますが、簡単に申しますと、ベネフィットすなわち得をするとか利益をもたらすとかいう意味で、ファクタ−すなわち因子、ベネフィットファクタ−得をする因子という意味です。

 最近リスクファクタ−すなわち危険因子という言葉を聞かれ、タバコは肺癌の危険因子とか、肥満は心臓病のリスクファクタ−というように云われるになったと思います。

 実はこのリスクファクタ−という言葉もここ30年ぐらいの医学研究、とくにそのなかでわれわれは疫学的研究といっていますが、だまってすわればびたりとあたるというあの易学ではなく、病だれにるまたを書いた疫学ですが、その長い研究で証拠がそろってきた危険因子が一般に知られ云われるようになったのです。

 それは一般には、なにをやってはいけない、これはだめですとか、お酒をのみすぎてはいけない、塩は高血圧にわるいからとか、タバコは止めなさいとか、たしかにその証拠はでてきたきたことをお話しなければなりませんが、いけないいけないというより、健康をたもつために、こうゆう食生活をしなさいとか、このように労働とか運動をしなさいとか、人生に得になるような因子を求め、証拠をあつめていこうではないか。 私は私なりに、脳卒中とか高血圧に得になる因子ベネフィットファクタ−を見つけましたよ、癌でもそのたの病気にならないためにベネフィットファクタ−をさがし求めていこうではないか、ということであります。

 私は弘前に参りまして、脳卒中や高血圧ならないためにその謎ときをやって35年たってしまいましたが、そのなかで塩を取りすぎることは、さきほど申しあげたリスクファクタ−になるのではないかといいはじめまして、こことにはそれなりに医学的な証拠が上がってきて、世界の人々がこの説を信じるようになりました。日本の東北地方のようにはなるな、食塩はできるだけ必要最少限すくない方がよいと、アメリカでは食塩は一日5グラム以下を目標にしようではないかということになりました。

 皆さんりんごが高血圧によいということをお聞きになったことがあると思いますが、これは私が昭和33年に熊本で日本衛生学会の総会で日本ではじめて高血圧の疫学についてシンポジウムが開かれ時に発表したからで、このニュ−スは世界中にながれました。

 それから30年血圧がどのように変化していったか、長いこと追跡し、最近のコンピュ−タ−で計算した結果がでましたので、その結果をさ来週ワシントンで開かれる第2回の国際予防心臓病学会で発表することになっています。これが私のいうベネフィットファクタ−でありまして、その証拠の一つが出てきたと考えたからであります。(1・6・3)

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