りんごの効用

 

 私は弘前に参りましてから30余年になりますが、弘前大学の医学部で、りんごと健康とのつながりに興味をもって研究して参りました。

 それは何故かというと、りんごが何千年も昔からありましたヨ−ロッパには、りんごを一日一個食べると医者を遠ざける、健康を保てるという諺があるからでありまして、医学部のなかでも、健康の原理を追究する学問としての衛生学を担当している者にとては、またとないテ−マでもありました。

 実際調べてみますと、色々なことがわかりました。

 なぜヨ−ロッパでりんごが健康のもとであったかということですが、これは昔ヨ−ロッパの北の地方には野菜や果物がなく、壊血病といわれる病気が風土病としてありましたが、壊血病、今ではビタミンCの欠乏でおこる病気であることがわかっておりますが、この壊血病がりんごを食べることによって自然に治っていたからではないかと思われます。

 また古くからりんごのペクチンという物が、からだの毒をけすといわれていました。

 このペクチンは、最近話題になって参りましたりんごの繊維と関係があります。この繊維、ファイバ−といわれていますが、これは今まで栄養学の方では、ほとんど役にたたないと考えられておりました。しかしこの繊維、ファイバ−が今あらためて見直されて参りまして、研究がすすんでおります。

 私はこの地方に多い脳卒中や高血圧の謎解きをして 30年研究して参りました。一番悪いと考えられるのは、食塩の摂りすぎであります。このナトリウムが多いことの害を、りんごのカリウムが保護をしているのではないかと考えました。この点を学会に指摘しましたが、このような考え方が次第に国際的にも認められるようになりました。

 このように考えて参りますと、りんごを毎日食べることは、いろいろな意味からいって健康の保持に役にたっていると考えられます。

 この青森県にりんごが入って100年、青森の方々の健康に随分良くなったと思います。

 NHKのテレビドラマの「いのち」は、今から40年前の津軽の地方を舞台に働いた女医さんの物語ですが、短命であると言われていたこの地方の方々の健康も、昔と違って今は随分よくなったと思います。これは皆さんがりんごを作ることによって経済的にも安定し、また知らず知らずりんごを食べていたことに関係があるものだと考えております。

 先日厚生省は日本人の健康づくりのための食生活指針を発表しました。

 要はバランスのよい食生活ということですが、そのなかには食塩はなるべく控えめにし、野菜果物をとることが述べられておりますのは、今までお話ししたことが認められてきたと思います。

 このことは世界をあげていわれてきていることでありまして、これを実行することによって皆さんはますます健康になるものだと思います。

 日本全国の人々に、一日一個のりんごを食べて戴いたらどうでしょうか。必ず皆さんが健康になるものだと思います。

(第9回青森県農協健康集会,昭61.7.22.)

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