疫学的な見方、考え方:「衛生学の窓から」

 

 ご紹介戴きました佐々木直亮です。記念すべき時に呼んでいただき、たぶん定年が近いためだろうと考えていますが、たいへん光栄に存じます。

 今日は疫学的な見方、考え方という題をつけさせてたが、先日槙哲夫先生から「外科の窓から」というたいへん貴重なご本をいただきました。そのお礼にと申しましょうか、今日お話することがわかっていましたので、槙先生の題を頂戴して「衛生学の窓から」というお話をしたいけれどということで、お礼のお手紙をさしあげたしだいです。

 10年くらい前になりますが、弘前大学が学園紛争で荒れていた時に評議員をやらせていただきましたが、たいへん真剣な討議の中でいろんな考え方があるんだなということを感じました。医学部でもいろんな方が出ていましたが、大きく分けて内科の先生方、あるいは外科の先生方、あるいは病理の先生方、その中でも若干考え方の違いもありましたが、それでは衛生学は一体どんな考え方をしていたのかと考えたことがありました。

 英語で衛生学教室のことをデパ−トメント・オブ・ハイジ−ンと云うんですが、今、欧米で私自身を紹介する時にはハイジ−ンという言葉を使うよりは、デパ−トメント・オブ・エピデミオロジ−のプロフェッサ−と云うと、まず納得してくれます。それでは何をやっているかというと、オン・ハイパ−テンシヨンとかオン・ストロ−クとか、このように自己紹介をすると話が通じるのですが、そんな事で、私が衛生学の講座を担当して約30年になりますが、どちらかと云うと、日本全国そうですが、その研究は疫学的であると。新しく卒業された諸君はある程度は理解してくれるかなと思いますが、ようやく疫学が市民権を得たと申しましょうか、今日は場違いな所でこういうお話をするということで、たいへん貴重な時間をいただき申しわけなく思っています。私が日頃考えていることの一端をお話し出来たらという気持で参りました。

 それではスライドを出して下さい。これはギリシャのコス島です。・・・・・

 

 ・・・・結論というのはありませんが、いろいろ地域社会の人々の生活を見ながら、そこの人達の生活の中の問題と、我々の健康との関係、健康情報と結び付けて理解していくということをやって来ました。

 食塩については、ある程度の疾病論的な意義があることがようやく認められているようです。2,3日前厚生省の健康づくりの為の食生活指針というのが出てきましたが、その中にも反映してきているように思います。

 リンゴはまだ未解決な点がありますが、先ほど述べたように長年血圧を測りつづけ、個人の血圧の推移からみると、リンゴを食べ続けている人の血圧はどうも良さそうだというデ−タ−が出てきましたので、それを学会に発表しているという事です。

 明日は弘前でリンゴ祭りがあり、NHKのクイズ面白ゼミナ−ルでは2分半のレクチャ−でしたが、今度は5分間のミニスピ−チをやるように云われています。リンゴの宣伝をするわけではありませんが、タバコはやめて、塩は少なくし、リンゴは毎日一個ということを自分も実践しようと考えています。どうもご清聴ありがとうございました。

 (第32回三葉会総会特別講演:1986.2.14.三葉会会報,29,11−19,昭61.2.2.)

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