スキ−とゴルフ

 

 ”休診の札をかかげてスキ−行き”

 今年の東医体のスキ−大会が野沢温泉スキ−場で開かれ弘大医スキ−部長の私も参加したが、日影ゲレンデに立ったときみた碑にきざまれていた句である。

 ”富井先生頌徳の碑”とあった。

 富井先生という方を私は知らないが、野沢温泉で診療をされ、スキ−を愛された先生の徳がしのばれ、又良き時代を思わせる句と読みとったのである。

 今は整形の先生が診療所をもっておられたが、シ−ズンともなれば骨折患者におわれ、スキ−行どころの話ではないだろう。

 スキ−が好きで好きでたまらない方だったら、さしずめ”往診の札をかかげてスキ−行き”とでもなるかな、という話をしたら、早速”往診の札をかかげてゴルフ行”ではないかと、ひやかされた。

 これが現代風というものか。お医者さんにぶっつけられた、ひにくとも受け取られる。

 総理大臣がゴルフに行くのに、色々といいわけを新聞記者にしなければならないのが、今日の日本のようだ。

 ”往診の先はいつも箱根とか”

 東京のある大学の先生が箱根のゴルフ場にかよって、教授の席をおわれるはめになったといった話を聞いたことがある。名誉教授にでもなったあとの話なら、誰もがうらやむだけの話ですむのだが、現役の教授ともなればそうはいかないのが世の中だ。

 しかし、しかしである。スキ−にせよ、ゴルフにせよ、青空の下、あの清い大気の中での一時は、何にもまして貴重である。そしてすこぶる健康的だ。

 レクリエ−シヨンは健康水準の重要な一つに数えられるのが今や世界の常識となった。

 1954年に国際連合が”生活標準および生活水準の国際的定義および測定に関する報告”を出して以来のことなのだが、”健康”から”人権としての自由”に至る12項目の中に”レクリエ−シヨンおよび娯楽”をあげたのだ。

 医師や学者が本来の仕事をする上で必要なものの”レクリエ−シヨン”が皆にすなおに理解され、認められる世の中に早くなってほしいものである。

(ひろさき医師会報,74,13,昭48.5.31.)

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