”ドライ”また良し 「湿度と健康」

 

 日本を離れて外国へ旅行すると、空気が極めて乾燥していることに気がつく。

 昔、結核や肺炎が多かったころ、冬など部屋の空気が乾燥するといけないと言って、枕元に湯気を立てたりしたものだ。しかし1年間外国で暮らしてみて、乾燥した空気の中での生活は、とても気持ちのよいものだと思うようになった。

 湿度は人間の温熱収支の要因として気温と並んで重要なものの一つだが、それが忘れられていたということであろう。だから、夏はやたらに気温を下げることだけ考えて湿度をとることをしないので、冷房病になったりする。

 湿度が増せば細菌は繁殖しやすくなることは常識だと思うが、むし暑い日の翌日に食中毒が出る。「日本のような高温多湿でむし風呂のようなところに、高価なバイオリンを持ってくることができるか」と言う音楽家がいると聞く。

 日本の気候の特徴は、ウエット(WET)なところにある。対照的に外国はドライ(DRY)であって、それが人々の生活全体、そして気持までも支配してきたのではないだろうか。

(東奥日報,昭52.10.14.)

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