長生きへの道 5つの教え      

 

 人間というものはとかく勝手なもので、若い時は気ままに生活し、いくらか先がみえてくると、長生きを求めるようである。今の生活の仕方に反省が必要な方はこんな記事は読まないし、もう十分長生きしたような方が読むのではないだろうか。

 今たばこをやめることが、長生きに通じる道であることがわかっていても、肺ガンになるのは他人であり、たとえガンになっても、医師が治してくれることを期待しているといった動物が人間であるようだ。

 だから人間は面白いし、研究のしがいがあると思うのだが、そんな方にも、偉い先生がいった言葉は、頭に残るだろう。

 ここにアメリカの心臓病の大家で、アイゼンハウワ−大統領の主治医だったホワイト博士が、長生きへの道として示した5項目を紹介し、私なりに解説しよう。

 No obesity(太るな)

 太るのが長生きへの道だったのは結核の多かった昔の話で、今は太ると命が短くなる。中年以上の方は体の代謝も下がり、仕事も楽になるので、大して食べなくても体はもつのだが、食欲は若い時のまま、食べることが人生の楽しみといっている間に、脂肪太りになって、心臓に負担がかかるのだ。大食は血圧に悪いし、食塩のとりすぎにもなる。

 Keep walking(歩きつづけよ)

 弘前くらいの町なら、どこへでも歩いていくか、自転車でいくのが一番良い。そのために安心して歩ける町にしてもらいたいものだ。忙しくて車がなくては用事のたせない方は、朝の散歩、日曜の運動と、つとめて歩くことを心掛ける必要がある。

 Don't smoke(たばこは吸うな)

 私の衛生学では、四時間たっぷりかけて、喫煙と健康についての講義をやる。先日、東京で開かれたWHO(世界保健機構)の会議でも”会議中の禁煙”を宣言して始まった。これは3年前WHOの総会で”喫煙の制限”について勧告を出したからなのだが、このところたばこに関しての専門家の出すデ−タはかなり厳しいものがある。ところが、専門を一歩はなれた社会では”個人的な大気汚染”といわれるたばこの害はどこふく風といったところだ。知らないことはおそろしいことだ。

 Never retire(引退するな)

 定年退官は後進へ席をゆずる社会の仕組みと思うのだが、ご本人の生活の終わりは意味していない。何か仕事をもつこと、自分の第三の道で歩み続けることこそ、長生きへの道である。

 Inherit long(親からもらう素質)

 この地方でいう”マキ”の理論である。長命も短命も親ゆずりということが、心臓血管系の病気についていえるのではないかという点である。人間の健康は、環境と遺伝の両輪に支配されており、食塩のとり過ぎといった環境要因が悪いことは明らかだが、そんな生活の中に生まれ育った人でも長生きできる方がいるとある。

 この5項目の中に長生きへの真理があるものと思う。

(東奥日報,昭49.5.29.)

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