リンゴジュ−スの砒素問題

 

 リンゴジュ−スにヒ素が検出されたといって、大分紙面をにぎわしたが、その解説の中に、あの程度のヒ素の濃度なら一度に千本も二千本ものまなけければ中毒にならないので、心配はないとあるのは問題だ。なるほど急性中毒ならそんな計算になろうが、ヒ素中毒の危険性はむしろ慢性中毒にあるといわなければならない。

 早い話が、つい数年前某ミルクの中にヒ素が入っていたが、一日にしてみれば約1ミリグラム程度だった。それが数カ月続いたから問題がおこったのだ。そのあとつづいておこったショウユによるヒ素中毒事件、近くは深浦の某工場の井戸水の中にヒ素が入っていて、その量は1リットル中にわずか1ミリグラム程度ではあったが、、それを利用していた人たちは慢性ヒ素中毒と大学病院で診断された。

 食品衛生試験法で、ヒ素が検出されてはいけないとし、その検出限界は無水亜ヒ酸として千万分の二(1リットル中に0.2ミリグラム)だがその量を越せば、慢性中毒の危険があるものと考えなければならない数値である。本県のリンゴジュ−スの中にその限界すれすれの量のヒ素が検出されたという話だがゆだんはできない。

 もともとヨ−ロッパでは水が悪いために、ビ−ルをのみブド−酒をのんでいるのだが、毎日毎日水の代わりにジュ−スをのんでもらいたいなら、今のうちに手を打ってどこへ出してもはずかしくないジュ−スをつくってもらいたいものだ。

(東奥日報;明鏡,昭34.10.11.)

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