ワクチン禍に国家補償を

 

 最近赤痢の予防ワクチンで大勢のお子さまたちが発熱されたと聞きました。私はこども二人を育て、先日は上の子にジフテリアの、下の子には天然痘の予防接種をすませたばかりです。これから大人になるまで、いくつかの注射を受けなければならないことを思い、いつの日にか厚生省の方のいわれた「生物学的誤差」による禍がわが子におこったらどうしようかと今から心配しています。

 日夜、よいワクチンをつくろうと研究されている先生方の努力を思い、現代の科学を信じている私は、だからといって予防接種をやめようとは思っていません。しかし、「何人も、この法律に定める予防接種を受けなければならない」ときめ、罰則まできめておきながら、そのために事故がおこったとき、それに対して国家が補償するという面になんらの法の上に取り上げられていないのは、手落ちのような気がするのです。公衆衛生がわが国で健全な発達をとげるためには、このような面に対する考慮が必要ではないでしょうか。

(朝日新聞;声,昭30.6.2.)

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