この文章は、マチャヴァリアニ駐日グルジア大使の講演を、できるだけ多くの方に知って頂く目的で、日本グルジア文化協会が簡易的にまとめたもので、大使の正確なスピーチではありません。大使のお答えの中にはくり返しも多く、一部を省略しています。引用は許可しますが、出典は明記してください。また内容に疑問がある場合には、直接グルジア大使館にお問い合わせ下さい。この件に関するお問い合わせはこちら


イヴァネ・マチャヴァリアニ駐日グルジア大使
質疑応答

テレビ朝日:小野
メドベージェフ大統領は、サルコジ大統領と電話して、8月22日までに撤退すると語っていますが、本当にそれを信じられますか?

A:ロシアの発言は、残念な事に虚偽に基づいています。ロシアの戦車が撤退をしているのは、誰も見ていないばかりか、むしろ占領地域を拡大しているのが現実です。またロシア政府は、正規軍とは別の民族的義勇軍をサポートしています。彼らは略奪や強姦、殺人をくり返し、治安を悪化させています。この時期多くの子供たちが西グルジアの黒海沿岸に避暑に出かけていますが、トビリシにいる両親は、自分の子供を迎えに行く事すらできないのです。これがロシアのいう撤退でしょうか?答えは明らかにノーです。昨日もNATOの外相会議で、フランスのクシュネル外相がロシアに対して特に強硬に、すでに合意した6項目の停戦案の実行を促しましたが、いままでのところ、ロシアはグルジアの領土から撤退した事実は確認されていません。ロシアはグルジアの領土保全など、まったく意に介していないばかりか、一昨日ですが、ロシアはアメリカがイラクに駐留しているのと同じくらい留まると言っています。ほんとうにばかげたことです。ロシアが撤退し、市民への暴力を止めて欲しいと心から願います。

産經新聞:湯浅
アメリカのブッシュ政権が政権末期になり、政策決断が出来ないという間隙を付いての事件だと思いますが、大使はアメリカに何を期待し、また何ができると思いますか?

A:アメリカの現政権は、ここ数日精力的に働き、グルジア全土が占領される事を防いだのですが、ブッシュ大統領をはじめ世界の指導者は、ロシアが変わっていないという現実を見せつけられました。西側の指導者は、これまでこの地域でロシアを自分たちのよきパートナーになりうると期待してきました。しかし今回のロシアのグルジア侵略により、これがすべて絵空事だったことが証明されました。ブッシュ政権は今年秋には終わりますが、アメリカの新大統領候補である共和党マケイン候補、民主党オバマ候補共にグルジアを支持しています。特にマケイン候補はロシアに非常に精通しており、ロシアがどんな危険な国かをわかっています。またオバマ候補のアドバイザーにもまたロシアの専門家がおり、オバマ候補もまた、ここにきてロシアの矛先がアメリカに向かっている事を理解しています。確かにアメリカの行動は遅かったと言えます。しかし8月6日にはアメリカの偵察衛星により、北オセチアと南オセチアを繋ぐトンネルに、ロシア軍が集結をして軍隊を送っているという情報がもたらされました。そして忌まわしいグルジア侵略が行われたのです。

NHK:石川
グルジアからみて、今回の6項目の和平案は完全に満足できるものですか? また、事実上グルジアが分割されるという懸念はありますか? さらに、現在では難しいとは思いますが、アブハジアと南オセチアとの今後の和解プロセスの可能性についてどのようにお考えですか?

A:6項目の和平案は、即時停戦と両軍の8月6日の位置へ戻るということ、そしてアブハジアと南オセチアの指導者を含む、ロシア、グルジア両国の話し合いをするということです。はっきり言える事は、この戦争はグルジアがはじめたのではないということです。グルジア軍は、ロシア軍の軍事支援を受けた南オセチアとアブハジアの分離独立派からの砲撃に対応したのです。これは今回の交戦の、もっと前から頻繁に起こっていたことなので。しかし今回はロシア軍が大挙してグルジア領内に進入し、人々を追い払い、多くの家に火をつけ、略奪をくり返しました。しかもそれらの村落の多くは、国連の停戦監視団の監視下に置かれていたのです。ロシア軍は、これらの村落に壊滅的な攻撃を仕掛けました。ロシアは3月のNATOサミットで、グルジアの将来的なNATO加盟が約束されたときから、今回の戦争の準備に取りかかっていました。グルジアはみなさんご存知のように、国境内にアブハジアと南オセチアという地域を抱えており、すでに16年に渡り交渉をしてきたという経緯があります。最近でもドイツやOSEがアブハジアに解決案を提示しています。グルジアからのアブハジアと南オセチアの分離独立を支持しているのはロシアだけなのです。ここにきて、この交渉はもっともっと時間がかかる事を覚悟しなければならないでしょう。アブハジアと南オセチアのグルジア人は1999年に追放されてしまっているのです。この時の戦闘で両地域から50万人ものグルジア人が自らの家を追われ、国内難民になってしまったのです。ロシアがアブハジアと南オセチアの独立を支援するのは皮肉です。なぜならば、その地にいた本来のアブハジア人とオセチア人は、すでに民族浄化されており、いないのですから。また、プーチン首相がアブハジアと南オセチアの独立を支援するのは大きな皮肉です。2年前北オセチアのベスラで、ロシアから分離独立を願う過激派が小学校を占拠した時、200人の子供の射殺を命じたのがプーチンです。またそれを報道した記者さえも殺害しました。さらにチェチェンでは分離独立を願う10万人の人を殺戮したのです。国連の基準は、少数民族の権利と人権を守るということです。ロシアは世界最強の権力を手にするために妨げになるならば、それが自国民であろうが、外国の記者であろうが抹殺すのです。私たちは民主主義のために断固として戦います。

TBS:水口
先ほどロシアに対応して攻撃したとおっしゃっていましたが、どのようなシナリオを考えていたのでしょうか?
また、先ほどのお答えの中で、アメリカの動きは遅かったということがありましたが、そのシナリオの中でアメリカはどのような位置づけだったのでしょうか?

A:くり返しになりますが、ロシアの第58軍がグルジアに進攻してきました。グルジアはそれに対して賢く対応しました。どちらが最初に仕掛けたかがよく問われますが、これは「戦いは霧の中」という有名な言葉があります。しかし事実は一つ、つまりロシアがグルジアの領土に侵入したのです。どのような戦略家でも、最大の効果を狙い戦略を立てますが、それがはたして最善だったかはだれもわからないのです。ロシアがグルジアの領土にここまで侵略してくることを想像した人はいません。南オセチアを支援するという名目でトビリシまでロシア軍を侵攻させ、グルジアの政権を倒そうとしたのです。そういた現状でグルジアは降伏をするればよいのですか。私たちグルジアは、この4年間、一生懸命普通の国を作るための努力をしてきました。経済も発展し、汚職もなくし、周辺国とのすばらしい関係を作ってきたのです。そしてカスピ海の原油をヨーロッパに送るためのパイプラインも建設しました。また何十億ドルを投資して港を整備し、経済地域を作ってきました。ロシアはこれを全て破壊したのです。ロシアはグルジアの成功を見ていられなかったのです。ロシアはこれまでもグルジアの経済にさまざまな圧力、封鎖をかけて潰そうとしてきました。
アメリカについてのご質問ですが、くり返しになりますが、アメリカや西側諸国は、今回のような大規模な軍事行動は想像していなかったということです。アメリカはイラクで問題を抱え、ヨーロッパはアフガニスタンで問題を抱えており忙しい。またオリンピックで世界の目がそちらを向いている。そういうタイミングをロシアの指導部は狙ったのです。ロシアの指導部はKGBそのものであり、全てを知っているのです。
また、グルジアと南オセチアの軍事衝突は、3〜4ヶ月に一回は起こっていたのです。今回の軍事衝突で、グルジアが先制攻撃を仕掛けたとロシアは報道していますが、これはグルジアの領土で頻繁に起こっていたことなのです。
このロシアのグルジア侵攻が、ロシア側の思惑取り進むならば、次はバルト三国やウクライナもロシアの侵略を受けるでしょう。つまりNATOをはじめとする西側諸国が試されてるのです。

日本経済新聞:石川
ロシアの挑発に乗ったとはいえ、ツヒンバリを大規模砲撃したことにより、ロシア軍進攻の口実を与え、グルジア市民を危険にさらしたということは政治的誤りではなかったかという点。またツヒンバリ攻撃に際して、アメリカに事前通告をしていたか。

A:政治的誤りであるかについては、私はわかりません。私は紛争開始の時、グルジアにいましたが、南オセチアでの戦闘が拡大しているという報告を受けました。そして南オセチア軍が持っていないはずの兵器で攻撃が行われました。さらにロシアの58軍が南オセチアとグルジアへ向かい基地を出たという衛星情報を受けました。いったいどうすればよいのですか。ロシア軍の行動が、深刻な侵略であるということを、広く西側に知らせなければなりませんでした。
また、我々は全ての国に対して、ロシアの侵略が開始された事を通告しました。このことは各国に大きな衝撃でした。なぜならロシアはこれは平和志向の行動だと説明していたからです。侵略をするのではなく、争いを鎮めるのだというまやかしだったのです。
私たちの世代にとってロシアの戦車がやってくるという恐怖は常にありました。自分たちの領土にロシアの戦車が進攻してくることを防ぐために、アメリカのサポートを受けNATOが作られました。それが起こったのがこの戦争です。ロシアは強力な軍事力と石油マネーを手にした国粋主義的な大国です。そのロシアと戦争をするなんて、だれが考えますか。

時事通信:石井
現在グルジア政府が把握している犠牲者の数、また日本政府に期待する支援は。

A:これはお答えするのは大変困難です。今ロシアが実際グルジアを支配しており、赤十字でさえ行動出来ないのです。また今の現状では、南オセチアで何人が犠牲になったかを把握することは困難です。はっきりしているのはグルジア国内で12万人以上の難民が発生しています。国際的な援助団体や支援活動に、ロシアはこれまで応じていません。
日本政府は、ここ数年グルジアに対して多大の援助をしています。グルジアの現状は、グルジア一国では到底克服出来ない規模です。日本政府は現状を把握し、2009年にはトビリシに大使館を開設する予定です。ですから、今後経済プロジェクトよりは、復興プロジェクトをはじめて頂けると思います。 高村外務大臣の談話でも、日本は他の西側諸国と共に、民主主義国家であるグルジアの支援と復興のお手伝いをすると語っています。

共同通信:松島
1992年に取り決められた、アブハジアと南オセチアの平和維持の取り決めは、今回の紛争で破綻したが、今後どのような平和維持の形が理想であるか。またロシアの主張である、コソボの独立は認めたが、アブハジアと南オセチアの独立はどうして認められないのかという点についてのグルジアの反応をお聞かせ下さい。

A:この16年間、ロシアがアブハジアと南オセチアで行ってきたことは、平和維持ではなく、平和を破壊する活動だということは誰もが知っています。この地域の問題解決のため、EU、国連などのあらゆる提案をロシアは反古にしてきました。ロシアは、その領土を欲しいのです。何千というパスポートをその地の少数民族に発行して、彼らはロシアの国民だと主張しているのです。それを許してしまうならば、危険な前例だと言わねばなりません。世界には何千という少数民族が存在します。ロシアは100万人の住民が住むチェチェンで、12万人を殺戮しました。ロシアが中立ということは断固としてありません。もっと国際的な中立の国々の監視団の仲介が望まれます。
コソボとの比較ですが、アブハジアと南オセチアでは、紛争前全住民の2/3もいたグルジア人が追放されてしまったのです。残った1/3の住民による住民投票は意味がありません。コソボではそういったことはありません。ほとんど全ての住民はその地に留まり、独立を願ったのです。全ての西側諸国はグルジアの領土保全を支持しています。

東京新聞:滝沢
軍事力では、圧倒的なロシアと交戦したのは、手詰まり状態の南オセチア、アブハジアの状況を、もっと西側諸国にアピールするという狙いがあったのでは。

A:非常に面白い質問だと思います。グルジアのような小国が、自分の領土で戦争をすることは自殺的な行為であります。グルジアは、これまで軍事的に南オセチア、アブハジアで行動するということを考えた事はありません。なぜなら、それはロシアと戦うという意味だからです。ですからグルジアは、国連が主導した平和維持活動に参加したのです。最後になりますが、改めて言いたいのは、今回の戦いがグルジアから仕掛けたものではないということを強く言います。グルジアはNATOやアメリカ、あるいは周辺諸国を通じて、ロシアに対話を持ちかけ、解決の糸口を探り続けました。しかしロシアは、グルジアとの対話を完全に拒絶しました。


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